箱庭

白/白い箱庭
蝶がひらひら

蝶/蝶が運んだ
記憶の塵が

塵/塵は積もって
白昼夢を描く


記憶を
塵として
蝶が運び
星を白く脚色してゆく


白/白い箱庭
ピアノの旋律が

音/音を響かせ
記憶を砕き

塵/塵を積もらせ
蝶が運んでゆく


記憶を
塵として
白昼夢は覚めぬ
星は白く脚色してゆく

羊水

羊水の中のわたし
羊水の中のわたし

ゆりかごの中のわたし
ゆりかごの中のわたし

もうじきわたしが産まれては消えてく
優しさに包まれ羊水の海にて眠る


羊水の中のわたし
羊水の中のわたし

ゆりかごの中のわたし
ゆりかごの中のわたし

あるじきなみだがとめどなく溢れた
優しさに包まれ羊水の海の記憶

点線球

点/線/球/
点/線/球/
点をたどり/線を描く/円になる/
交錯する/線を描く/交わるところ/
点灯する点/持続する線/円は球になる/
円は子宮/鼓動は響く/交わるところ/
点をたどり/線は涙のつたい道/涙の落ちるところ/それは波紋の円/

阿片の町

阿片に溺れている町/うつろな空気と/うつろなまなこ/
阿片に溺れている町/世捨て人/ここに逃げ込む術/

うつろなまなこで/あなたは話す/
言葉を忘れたから/あなたを忘れたから/
さよなら/

阿片に溺れて/悲しみを忘れた/とめどなく涙は/したたる/
遠ざかる記憶/あちらに/こちらに/香りが残ればそれだけでいい/

わたしの歯/わたしの耳/うたはない/
わたしの目/わたしの口/うたはない/

それぞれに/独立し/揺れ動く/
それぞれに/自立し/響き出す/

わたしの歯/わたしの耳/うたはない/
わたしの目/わたしの口/うたはない/

それぞれに/独立し/悲しみ出す/
それぞれに/自立し/悲しみ出す/

それぞれに/朝が来て/忘れる/
それぞれに/朝が来て/きっと/忘れる/